4. 季節を映す水の言葉
水は季節とともに姿を変えます。夏には涼やかな清流や水遊び、秋には水面に映る紅葉、春には霞む川辺、冬には氷に閉ざされた湖などが思い浮かびます。
- 春水(しゅんすい)
春の雪解けや雨で豊かに満ちた川の水。生命の芽吹きを象徴する。 - 雪解水(ゆきげみず)
冬の雪がとけて流れ出す水。春の訪れを告げる自然の兆し。 - 春霞(はるがすみ)の水辺
春に霞がかかる川や湖。柔らかで幻想的な景観をつくる。 - 夏水(なつみず)
夏に涼を与える水。川遊びや打ち水など、暮らしに潤いをもたらす。 - 秋水(しゅうすい)
秋の澄んだ水。冷たさと透明感を兼ね備えた美しい水を指す。 - 冬水(ふゆみず)
冬に澄みわたる冷たい水。清浄感と静けさを伝える。 - 氷面(ひも)
冬に凍った水面。透明で硬質な美しさを持つ。 - 水氷(みずごおり)
水が凍った状態。厳冬の冷たさを象徴する。 - 霜水(しもみず)
霜が溶けて流れる水。冬の朝の繊細な美を描写する言葉。 - 夏川(なつがわ)
夏の川。涼やかで開放的な季節感をもつ。 - 冬川(ふゆがわ)
冬の川。水量が減り、静けさを湛える景色を表す。 - 春川(はるがわ)
春に雪解け水で勢いを増す川。躍動感と季節の移ろいを示す。 - 秋川(あきがわ)
秋に澄み切った水を流す川。紅葉とともに美しい景観をつくる。 - 初水(はつみず)
年初めに汲む水。新年を清める象徴的な言葉。 - 若水(わかみず)
正月に汲む水。神聖な意味を持ち、縁起の良い行事と結びつく。 - 雪水(ゆきみず)
雪を溶かした水。澄んで柔らかい口当たりから生活用語としても使われる。 - 雪消の水(ゆきげのみず)
雪が消えて流れる水。 - 打ち水(うちみず)
夏に涼を得るために庭や道に水をまく習慣。 - 水澄む(みずすむ)
秋の澄んだ水を表す代表的な季語。透明さと清涼さを強調。 - 豊水(ほうすい)
雨や雪解けで水が豊富になること。 - 花筏(はないかだ)
散った桜の花びらが川や池に浮かび流れるさま。春の代表的な季語。 - 雪解雫(ゆきげしずく/ゆきげしづく)
雪解けのころ、軒先や枝からしたたり落ちる雫。春の訪れを告げる繊細な情景を表す。
5. 比喩や象徴としての水の表現
水は古くから柔軟さ・清らかさ・生命力の象徴として用いられてきました。水鏡に心を映す比喩や、羽衣のような水しぶきの表現などは、人間の心情や美意識を反映しています。
- 水鏡(みずかがみ)
水面が鏡のように風景や心を映すさま。静けさや内省の象徴。 - 清水の心(しみずのこころ)
清らかな水のように澄みきった心。誠実さや無垢の象徴。 - 生命の泉(せいめいのいずみ)
命の源となる水を泉にたとえた言葉。宗教的・哲学的な意味を持つ。 - 潤い(うるおい)
水がもたらすみずみずしさ。心や生活を豊かにする比喩としても使われる。 - 水の音色(みずのねいろ)
流れる水を楽器や旋律になぞらえた表現。自然の音楽を表す。 - 水精(すいせい)
西洋の伝承に登場する水の精霊。日本でも文学表現として用いられる。 - 水玉(みずたま)
水のしずくを玉にたとえた表現。美しさや可憐さの象徴。 - 清流のごとし(せいりゅうのごとし)
清らかな川の流れに例えて、正直で濁りのない生き方を表現する。 - 水天一碧(すいてんいっぺき)
水と空がひとつにつながるように青く広がる景色。雄大で清澄な情景を描写する。 - 水の如し(みずのごとし)
老子の思想に由来する表現。柔らかでありながら強靭な性質を持つ水の生き方を示す。 - 水明(すいめい)
明るく澄んだ水。人生の明朗さや清廉さの比喩にもなる。 - 流転(るてん)
水が絶え間なく流れ変化するように、世の移ろいを表現する言葉。 - 水天(すいてん)
水と空が一体化した情景を指す表現。境界のない広がりを象徴する。 - 水心あれば魚心あり(みずごころあればうおごころあり)
相手の気持ちに応じれば、自分にも好意が返ってくるということわざ。 - 水天一色(すいてんいっしょく)
水と空がひとつの色に溶け合う景色。大自然の雄大さを示す。 - 水無月(みなづき)
旧暦6月の異称。水の季節を象徴する美しい言葉。 - 水の月(みずのつき)
水面に映る月を表す表現。儚く手に入らない美しいものの象徴として用いられる。 - 水煙(すいえん)
滝や波が立ちのぼらせる白い霧状の水しぶき。幻想的で力強い景観を示す。 - 水神(すいじん)
水を司る神。豊穣や災いをもたらす存在として、信仰や伝承に登場する。 - 水影(みずかげ)
水に映る影。人や自然を映すことで心象や儚さを表す。
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