古代の聖書や禁忌とされた外典、そしてエノク書には、
“200名の堕天使”の名前と役割が静かに記されています。
彼らの存在は、宗教史だけでなく、象徴心理学や創作の世界観にも大きな影響を与えてきました。
本記事では、堕天使の名前・意味・役割を中心に、一覧にまとめています。
神秘的な堕天使の世界に触れながら、響きや象徴性にも目を向けてみてください。
1 聖書に言及がある堕天使/悪霊(Canonical / Biblical)
- サタン(Satan)
旧約・新約に登場する「敵対者」。天から落とされた存在として描かれ、堕天使の典型。 - アバドン(Abaddon)/アポリオン(Apollyon)
黙示録9:11に登場する「底なしの穴の王」。名の意味は「破壊・滅び」。 - ベルゼブブ(Beelzebub)
新約で悪霊の長として言及。元はバアル神が悪魔化したとされ、後世で堕天使扱い。 - マステマ(Mastema)
『ヨベル書』に登場する敵対の霊。人間を試す役目を持つ堕落した天使。 - ガドリエル(Gadreel)
『エノク書』で堕天使として登場。エデンの蛇と同一視されることもある。 - アザゼル(Azazel)
『レビ記16章』と『エノク書』に登場。人間に武器や化粧を教えた堕天使。 - アザエル(Azael)
エノク書に登場する堕天使。人間に呪術と金属加工を教える。 - セムヤザ(Semyaza)
エノク書の堕天使200名のリーダー格。「神の名を見る者」。 - ラミエル(Ramiel)
エノク書の堕天使。意味は「神の雷」。監視者の一人。 - サリエル(Sariel)
エノク書の堕天使。月・天体の運行を人へ伝えた。 - バラキエル(Baraqijal / Baraqiel)
エノク書の堕天使。天文学と星の兆しを教えた。 - コカビエル(Kokabiel / Kokabiel)
「星の神」を意味するエノク書の堕天使。星の運行を司る。 - アルマロス(Armaros)
エノク書の堕天使。呪いの解呪(魔術を解く術)を人間に教えた。 - アラキエル(Araqiel)
エノク書の堕天使。地形・地震・地の兆候を人に教えた。 - シャムシエル(Shamsiel)
エノク書に登場する太陽の天使。堕天して人間に秘密を伝えた。 - ウッザ(Azza / Uzza)
タルムードに登場。人間の女性に惹かれて堕落した天使。 - リリス(Lilith)
『イザヤ書34章』に比喩的に登場。タルムードでは堕天した女性の悪霊として確立。 - ナアマ(Naamah)
カバラ文献に登場する誘惑の堕天女性。悪霊の母とされる。 - アグラト・バト・マハラト(Agrat bat Mahlat)
タルムードの夜の女悪霊の一人。堕落した天使として描かれる。 - イヴリース(Iblis)
クルアーンでアダムにひざまずくことを拒み堕落。イスラム圏の“堕天使的存在”。 - ハールートとマールート(Harut & Marut)
クルアーンに登場。堕落し人間に魔術を教えた2人の天使。
2 エノク書の堕天使
- Semyaza(セムヤザ)
堕天使200名の長。人間の女性に惹かれ、他の天使を説得して堕落へ導いた。 - Azazel(アザゼル)
人に武器、金属加工、化粧、魔術を教えたことで神に罰せられる堕天使。 - Armaros(アルマロス / Armaros)
呪術や呪いを解く方法(解呪)を人間に教えた堕天使。 - Baraqijal(バラキエル / Baraqiel)
天文学・占星術を教えた堕天使。星の兆しを伝えた。 - Kokabiel(コカビエル / Kokabiel)
「神の星」を意味し、星の運行支配を人へ教えた堕天使。 - Sariel(サリエル)
月の軌道と天体の秘密を伝えた堕天使。エノク書の重要天使の一人。 - Ramiel(ラミエル)
“神の雷”。堕天した監視者のひとりで、地上の知識を漏らした。 - Araqiel(アラキエル / Arakiel)
地の兆候(地震、地形、土地の性質)を教えた堕天使。 - Shamsiel(シャムシエル)
太陽の天使。堕天後も地上で秘密を伝えたとされる。 - Satariel(サタリエル)
隠匿や秘密の知識を司る堕天使。後世のカバラでも重要。 - Penemue(ペネムエ)
書物・読み書き・知識を人に教え、堕天とされる。 - Kasdeja(カスデヤ / Kasyade)
禁断の魔術や呪術を教え、腐敗を広めたとされる堕天使。 - Azael(アザエル)
人間に不正な呪術や戦いの技術を教えた堕天使。 - Gadreel(ガドリエル)
人間に武器を教えた堕天使。エデンの蛇だった可能性を示す伝承も。 - Asael(アサエル)
アザゼルと並ぶ堕天使。人に化粧や装飾を教えた。 - Chazaqiel(ハザキエル)
雲の知識や天候の兆しを教えた堕天使。 - Batarel(バタレル)
天の風の秘密を教えた堕天使。 - Haraqiel(ハラキエル)
大地の兆候を読み解く技術を伝えた堕天使。 - Samsapeel(サムサピール)
天界の名を地上で語ってしまった堕天使。 - Turiel(トゥリエル)
地上の山の秘密を人間に教えた堕天使。
3 カバラ・タルムード・ユダヤ伝承の堕天使
- Samael(サマエル)
「盲目の神」「毒の天使」と呼ばれる堕天使。カバラでは死をもたらす天使であり、リリスの伴侶。 - Lilith(リリス)
夜・誘惑・死産の女悪霊。アダムの最初の妻とされ、堕天使・魔女の祖として描かれる。 - Naamah(ナアマ / Nahema)
カバラの女性堕天使。美貌を持ち、人間と天使の男を惑わせたとされる。 - Agrat bat Mahlat(アグラト・バト・マハラト)
タルムードに登場する4人の夜の女悪霊のひとり。人に魔術と狂気をもたらす堕天女性。 - Eisheth Zenunim(エイシェト・ゼヌニム)
「淫蕩の女」。堕落した女性天使で、誘惑と死に関わる。 - Uzza(ウッザ / Azza)
人間の女性に惹かれ堕落した天使。Watchers(監視者)の1人としても扱われる。 - Aza(アザ / Azza)
サマエルやリリスとともに語られる堕天使。人間への欲望で堕落した。 - Abramel(アブラメル)
ソロモン魔術書にも登場。堕落した知識の守護者として記述がある。 - Kasyade(カスデヤ / Kasdeja)
禁断の魔術を人に教えた堕天使。エノク書との共通系。 - Dumah(ドゥマー)
沈黙と黄泉の使者であり、死者の国を司る堕天使(カバラの書物による)。 - Rahab(ラハブ)
傲慢の象徴として語られる堕天使。海の混沌の天使から堕ちた存在。
4 イスラーム伝承に堕落した天使
- Iblis(イブリース)
神がアダムに跪くよう命じた際に拒否したため、天界から追放された存在。イスラームでは“堕天使的な存在”だが、ジンであるとする解釈も併存する。 - Harut(ハールート)
神によって地上に送り込まれ、本来の使命を忘れて人間の誘惑に負けた堕落天使。クルアーン2:102に記述。 - Marut(マールート)
Harut と共に地上へ降ろされた天使。魔術の知識を人間に教え、堕落したとされる。 - Futrus / Futrusiel(フトゥルス)
イスラーム民間伝承に登場する天使。ある物語では神への反逆により翼を折られ、堕天したとされる。 - Rahab(ラハブ)
ユダヤ伝承からイスラーム圏に取り込まれた堕落天使。海の混沌・傲慢の象徴であり、堕天した天使=悪霊として扱われる。

コメント