年末が近づくと、日々の暮らしの中に少しずつ特別な空気が流れ始めます。掃除や片づけ、贈り物の準備、行き交う人の足取りまで、どこか慌ただしく、それでいて一年の終わりを実感させる時間です。
日本には、こうした年末の時期に行われてきた多くの行事や風習があります。それぞれは静かで目立たないものも多いですが、長い時間をかけて受け継がれてきた理由があります。
このページでは、日本各地で行われている年末の行事を紹介しています。由来や意味を知ることで、年末の過ごし方が少しだけ丁寧に感じられるかもしれません。
年末の行事一覧|日本の伝統と習慣
暦と区切り|年末を迎える基本行事
- 師走 — しわす
旧暦の十二月を指す呼び名。年の瀬で人が慌ただしく走り回る、という連想でも知られます。 - 大雪(二十四節気)— たいせつ
二十四節気の一つ。本格的な冬の到来を告げ、山だけでなく平野にも雪が積もり始める頃とされます(目安は12月7日頃)。 - 冬至(二十四節気)— とうじ
二十四節気の一つ。一年で昼が最も短く、夜が最も長い日を含む節気で、年によって日付が前後します。 - 事八日 — ことようか
12月8日と2月8日を指す年中行事名。地域によって「事始め」「事納め」の解釈が異なり、暮らしの区切りとして意識されてきました。 - 事納め — ことおさめ
一年の仕事や作業を納める区切りの日。12月8日を「事納め」とする伝承があり、道具を休ませる意味合いも語られます。 - 正月事始め — しょうがつことはじめ
新年を迎える準備を始める日とされる習わし。地域差はありますが、12月13日を目安に語られることが多い行事です。 - 松迎え — まつむかえ
門松に使う松などを用意し、年神さまを迎える支度を整える習わし。煤払いと並んで語られることがあります。 - 仕事納め — しごとおさめ
官公庁・企業などで年内の業務を終える日。日付は組織や年によって異なりますが、年末の大きな区切りとして定着しています。 - 年賀状の引受開始 — ねんがじょうのひきうけかいし
郵便局で年賀状を「年賀」として受け付け始める日。毎年12月中旬に設定されます。 - 年賀状の投函目安(元日に届けるため)— ねんがじょうのとうかんめやす
元日に届くようにするため、郵便局が示す差し出し目安日が設けられています(年によって案内が出ます)。 - 大晦日 — おおみそか
一年の最後の日(12月31日)。年を越す準備を整え、家族や地域で静かに区切りを迎える日です。 - 除夜の鐘 — じょやのかね
大晦日の夜、寺で撞かれる鐘。年の終わりに心を整え、新しい年を迎える象徴として親しまれています。 - 年越しそば — としこしそば
大晦日にそばを食べる習慣。細く長い形にあやかり、無事な年越しや長寿を願う意味合いで語られます。
寺社の年末行事|一年を納め、清める祈り
- 針供養— はりくよう
折れた針や古い針を労わり供養する行事。寺社では12月8日に行われる例が多く、裁縫の道具に感謝を捧げます。 - 歳末祈祷 — さいまつきとう
年の終わりにあたり、家内安全や無病息災を祈願する祈祷。寺社で12月中に随時行われます。 - 納め不動 — おさめふどう
不動明王の縁日のうち、年内最後の縁日。12月28日に行われ、一年の締めくくりとして参拝されます。 - 納め観音 — おさめかんのん
観音菩薩の年内最後の縁日。12月18日または24日など、寺院によって日が定められています。 - 納め地蔵 — おさめじぞう
地蔵菩薩の年内最後の縁日。12月23日や24日に行われることが多く、一年の感謝を込めて参拝されます。 - 納め天神 — おさめてんじん
菅原道真を祀る天満宮で行われる年内最後の縁日。学業成就や知恵を授かった一年への感謝が込められます。 - 歳末護摩供 — さいまつごまく
密教寺院で行われる年末の護摩祈祷。炎に願いを託し、煩悩や厄を焼き清める法要です。 - 年末法要 — ねんまつほうよう
一年の締めくくりとして営まれる仏教行事。先祖供養や感謝の意味を込めて行われます。 - 大晦日参り — おおみそかまいり
12月31日に寺社へ参拝し、一年の無事を感謝する習わし。地域や家庭によって呼び方が異なります。 - 除夜 — じょや
大晦日の夜そのものを指す言葉。寺院では法要や鐘の準備が行われ、静かな緊張感に包まれます。 - 歳末参拝 — さいまつさんぱい
年の瀬に行う参拝の総称。初詣とは異なり、一年を終える感謝と区切りの意味合いが強い参拝です。 - 師走の大祓(年越の大祓)— しわすのおおはらえ
12月31日頃に行われる祓いの神事。半年分の罪穢れを祓い、新年を迎えるために心身を清める行事として案内されます。 - 形代(人形)納め — かたしろ(ひとがた)おさめ
形代(人形)に氏名などを書き、身体を撫でて息を吹きかけて納めることで祓いを受ける作法。12月末までの受付を設ける神社もあります。 - 除夜祭(年越祭)— じょやさい(としこしさい)
大晦日の夜に神社で行われる年越しの祭。行く年の無事を感謝し、来る年の安泰を祈る神事として説明されます。
年末の市・縁起物|新年を迎えるための市と風習
- 羽子板市 — はごいたいち
正月用の羽子板を売る年末の市。東京・浅草寺の「歳の市」が特に有名で、12月17日〜19日頃に行われます。 - 歳の市 — としのいち
年末に開かれる市の総称。正月用品や縁起物を求めて立つ市で、各地の寺社や門前町で行われてきました。 - 正月用品市 — しょうがつようひんいち
門松・しめ縄・鏡餅など正月準備の品を扱う市。12月中旬以降、商店街や市場で開かれます。 - 注連飾り市 — しめかざりいち
しめ縄やしめ飾りを専門に扱う年末の市。神社の門前や地域の広場で行われることがあります。 - 門松市 — かどまついち
門松を販売するための市。竹や松を扱う植木市として開かれる例も多く、年末の風物詩です。 - 正月花市 — しょうがつはないち
松・竹・梅や千両、葉牡丹などを扱う花市。正月の床の間や玄関を飾るため、年末に立ちます。 - 縁起物市 — えんぎものいち
熊手・達磨・福笹などを扱う市の総称。地域や寺社によって扱われる縁起物が異なります。 - 熊手市(年末開催)— くまでいち
商売繁盛を願う熊手を扱う市。酉の市の最終回が年末にかかる年もあり、歳末の風景として定着しています。 - 達磨市(年末回)— だるまいち
高崎だるまなどを扱う市のうち、12月中に行われる回。願掛け用のだるまを求める人で賑わいます。 - 歳末植木市 — さいまつうえきいち
門松用の松や正月向けの植木を扱う市。都市部の公園や寺社周辺で開かれます。 - 正月飾り露店 — しょうがつかざりろてん
商店街や路上に立つ正月飾りの露店。市という形を取らずとも、年末の風物詩として広く見られます。 - 年末市場 — ねんまついちば
魚・野菜・餅などを扱う年末の市場。台所を整えるための買い出しの場として重要な役割を果たします。 - 歳末魚市 — さいまつうおいち
正月用の魚介を扱う市。築地・地方市場などで年末に特に賑わいます。 - 餅市 — もちいち
餅や餅米を扱う年末の市。鏡餅や正月用の餅を求めて人が集まります。 - 鏡餅市 — かがみもちいち
鏡餅を専門に販売する市や売り場。年末に限って立つことが多い市です。 - 歳末大売出し — さいまつおおうりだし
商店街や百貨店で行われる年末の一斉セール。年越し準備と結びついた近代的な年末行事です。 - 歳末福引 — さいまつふくびき
商店街などで行われる年末の抽選行事。買い物と娯楽を兼ねた年末の恒例行事です。 - 年末露店市 — ねんまつろてんいち
正月用品や食べ物を扱う露店が集まる年末の市。地域行事として定着しています。 - 正月準備市 — しょうがつじゅんびいち
正月に必要な品を一括して揃えられる市の総称。自治体や商店街が主催する例もあります。 - 歳末市立 — さいまついちだて
年末に市を立てること自体を指す言葉。古くから文献や記録に見られる表現です。 - 注連縄・正月飾りの頒布 — しめなわ・しょうがつかざりのはんぷ
神社境内などで注連縄や正月飾りを授与・頒布する年末の動き。12月下旬〜大晦日にかけて案内される例があります。 - 終い弘法(東寺・弘法市)— しまいこうぼう
京都・東寺の弘法市のうち、年内最後にあたる市。正月の縁起物を求める人でも賑わう、と紹介されています。

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