夏という季節は、自然のうつろいや人の心を鮮やかに映し出します。
古典文学の中には、そんな夏を表現するための、美しく情緒あふれる言葉が数多く登場します。
ここでは、「古典 夏のことば」をテーマに、105の語彙を7つのカテゴリに分類しながらご紹介します。
涼風、蛍、行水、そして短夜——。言葉から、古の夏を感じてみませんか?
夏を彩る美しい日本語 一覧
1. 季節・気候を表す言葉
夏そのものの季節感や気候を表現した言葉たちです。暑さや涼しさ、日差しや雨など、自然が語る夏の表情が浮かび上がります。
- 夏(なつ)
四季の一つ。旧暦では4〜6月を指し、生命の盛んな季節。 - 夏の夜(なつのよ)
短くてはかない夏の夜。和歌では儚さの象徴として詠まれる。 - 炎天(えんてん)
強烈な太陽が照りつける、真夏の空模様。 - 夏日(かじつ)
暑い夏の日。現代では気温25度以上の日のことも指す。 - 猛暑(もうしょ)
とても暑いこと。古典では激しい暑さを上品に表現。 - 真夏(まなつ)
夏の真っ只中。自然や心も盛んに活動する季節。 - 夏越し(なごし)
夏を無事に越すこと。「夏越の祓」という神事もある。 - 梅雨(つゆ/ばいう)
夏の始まりを告げる長雨。湿気の多い時期。 - 五月雨(さみだれ)
旧暦五月ごろに降る長雨。梅雨の古典的な呼び方。 - 薫風(くんぷう)
初夏に吹く、草木をなでるような香り高い風。 - 涼風(すずかぜ)
夏にふと吹く涼しい風。風鈴などと一緒に詠まれることも。 - 炎暑(えんしょ)
とても暑いこと。文章語で使われる厳しい暑さの表現。 - 夏空(なつぞら)
夏の広くて明るい空。入道雲などとともに描かれる。 - 残暑(ざんしょ)
秋の初めに残る夏の暑さ。まだ暑いという情感をこめる。 - 夜暑(やしょ)
夜なのに暑いこと。寝苦しさや夏の夜の不快さを表す。
2. 空・天体・天気の言葉
空に関わる現象や天体は、古典において季節感を添える大切な素材。夏の夜空や入道雲、激しい夕立などが、詩情豊かに描かれています。
- 入道雲(にゅうどうぐも)
夏の空に立ちのぼる、もくもくとした巨大な雲。 - 雲の峰(くものみね)
入道雲が高くそびえる様子。俳句・和歌で好まれる表現。 - 夕立(ゆうだち)
夏の午後や夕方に急に降る激しいにわか雨。 - 雷(かみなり)
夕立に伴って鳴る大きな音。自然の力の象徴。 - 虹(にじ)
雨上がりの空に出る七色の弧。希望や吉兆のイメージ。 - 月(つき)
夏の月は短夜の象徴。はかない恋心などとも結びつく。 - 星(ほし)
澄んだ夏の夜空に輝く星。願いや恋を重ねて詠まれる。 - 夏の空(なつのそら)
入道雲やまぶしい青空など、夏の空模様の総称。 - 日盛り(ひざかり)
日中、太陽が最も高く強く照る時間帯。 - 照り(てり)
太陽のまぶしさや地面への照り返しのこと。 - 日影(ひかげ)
日差しを避ける影の場所。涼を求める表現にも。 - 薄曇り(うすぐもり)
夏の日に薄く雲がかかった空。やや静かな情景。 - 朝焼け(あさやけ)
夏の朝に見られる赤く染まった空。希望の象徴。 - 夏星(なつぼし)
夏の夜空に見られる星々。七夕の織姫・彦星なども含む。 - 風立ちぬ(かぜたちぬ)
風が吹きはじめること。季節の移り変わりの表現として使われる。
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