中国の妖怪 一覧122種類|神話・伝説・霊獣・民間伝承・四神まで

3. 道教・仏教に基づく霊的存在と異界の仕組み

中国の妖怪文化には、道教や仏教の教義に基づいた多くの霊的存在が含まれています。「三尸(さんし)」「黒無常・白無常」などは、死後の世界や魂の行方、カルマ(業)といった思想と結びついて登場します。彼らは単なる物語の登場人物ではなく、人々の死生観や宗教儀礼に関わる存在として重要です。こうした存在を知ることで、中国人の霊魂観や信仰の構造が浮かび上がります。

1. 三尸(さんし)

人間の体内に潜むとされる三種の邪霊で、道教の内丹思想に基づく存在。人間の寿命を縮める悪しき精霊として排除対象とされた。

2. 三虫(さんちゅう)

三尸と同一視されることもあるが、広義には人体に悪影響を及ぼす内なる虫の総称。道教的な不浄観に根差した概念。

3. 黒無常・白無常(こくむじょう・はくむじょう)

死者の魂を冥界に導く使者。黒衣と白衣をまとった二人の冥差で、善悪の区別なく人を冥府へと連れて行く役割を担う。

4. 馬頭(めず)

仏教において冥界の獄卒の一人。地獄で亡者を責める役割を持ち、牛頭と対を成す存在としてよく登場する。

5. 牛頭(ごず)

冥界の門番・獄卒として地獄で罪人を裁く。馬頭と並び、死者の魂にとって畏怖の象徴である。

6. 太歳星君(たいさいせいくん)

歳星(木星)の精霊で、道教においてその方角に逆らうことを忌む重要な神格。年ごとの吉凶を司るとされる。

7. 如意真仙(にょいしんせん)

『西遊記』に登場する道教系の仙人で、牛魔王の弟。天界と地界を往来する神仙として描かれる。

8. 混世魔王(こんせいまおう)

『西遊記』に登場する魔王で、混沌と悪を象徴する存在。仙仏の秩序に抗う霊的対抗者としての性格を持つ。

9. 鬼(き)

中国では「死霊」や「幽魂」の総称として使われる言葉で、仏教の六道の一つ「餓鬼道」の概念とも連携する。日本語の「おに」とはやや意味が異なる。

10. 縊鬼(いき)

自ら命を絶った者の霊が変じるとされ、他者をも死に導く恐ろしい怨霊。仏教的な因果報応と結びついて伝承される。

11. 冥官(めいかん)

冥界で死者の審判を行う官吏。道教・仏教両方に登場する霊的存在で、生前の行為に応じた裁きを下す。

12. 魂魄(こんぱく)

人の霊魂を構成する二つの側面。「魂」は天に昇り、「魄」は地に留まるとされる。死後の魂の行方を語るうえで重要な概念。

13. 地蔵(じぞう)

仏教において地獄に堕ちた魂を救う菩薩。中国でも民間信仰として広く崇拝され、冥界の守護者として描かれる。

14. 炎帝神農氏(えんていしんのうし)

神農として知られる炎帝は、薬草と農耕の守護神であると同時に、死後世界の病を治める霊格としても信仰された。

15. 魃(ばつ)

日照りをもたらす精霊で、古くは邪霊ともされるが、ある種の霊的存在として祀られる地域もある。干魃との関連がある。

16. 水落鬼(すいらくき)

水難事故で亡くなった人の霊が水中に留まり、後続の人間を引き込むとされる妖怪。死後の執念の象徴。

17. 鬼市(きし)

死者の魂や霊たちが集うとされる市。道教における死後の世界の一断面として、夢や幻視の中に現れることがある。

18. 霊爽式憑(れいそうしきひょう)

葬式に現れる霊で、死者の魂を喰らうとされる。喪の儀式に対する恐れと戒めがこの存在に込められている。

 

4. 伝説の獣たちと霊獣とは?瑞獣・妖獣の違いと役割

中国神話には多くの「霊獣(れいじゅう)」や「瑞獣(ずいじゅう)」が登場し、社会秩序や自然の調和を象徴しています。たとえば「麒麟」「獬豸(かいち)」「白沢(はくたく)」などは、正義・吉兆・知識の象徴として宮廷や文献で重用されました。一方で「饕餮(とうてつ)」「相柳(そうりゅう)」のように禍や混乱をもたらす獣も存在します。

1. 麒麟(きりん)

仁と徳の象徴とされる瑞獣で、王の正しい統治の時代に現れると信じられてきた。龍の顔と鹿の体を持ち、鳳凰と並ぶ聖獣。

2. 白沢(はくたく)

あらゆる妖怪を知るとされる神獣で、災厄から人を守る護符にその姿が使われることもある。知識と霊性の象徴。

3. 獬豸(かいち)

正義と法の化身で、無実の人を見抜く能力を持つとされる霊獣。古代の裁判官の衣装にも意匠が取り入れられていた。

4. 応龍(おうりゅう)

羽を持つ龍で、神々の戦いに参加した英雄的存在。戦や秩序の守護者として伝えられる。

5. 畢方(ひっぽう)

一足の鶴のような鳥で、火災をもたらすとされる凶兆の象徴。目撃されると火難の前兆とされた。

6. 相柳(そうりゅう)

九つの頭を持ち、水を操る邪悪な龍。治水神話や共工との関係で登場し、災厄の象徴とされる。

7. 饕餮(とうてつ)

貪欲の象徴で、飽くことを知らない獣。青銅器の文様にも使われ、警告や戒めの意味を持つ存在として扱われる。

8. 獙獙(へいへい)

狐の体に翼を持つ霊獣で、旱魃の前兆とされる。姿は飛翔しているが、飛ぶことはできないと伝わる。

9. 狻猊(さんげい)

龍生九子の一つで、仏座の下に配されることが多い霊獣。獅子に似た姿を持ち、威厳と安定の象徴。

10. 狴犴(へいかん)

龍生九子の一つで、牢獄の門に彫られることが多い。法と秩序の守護としての象徴的意味を持つ。

11. 睚眦(がいし)

龍生九子の一つで、怒りを象徴する存在。刀剣の装飾として使われ、武の力と憤怒の霊性を表す。

12. 負屓(ふき)

龍生九子の一つで、文鎮や柱の装飾に使われる。重厚で安定した存在感があり、建築の守護としての役割を担う。

13. 嘲風(ちょうほう)

龍生九子の一つで、風を好むとされ、建物の屋根に配置される。災厄を遠ざける守護の象徴とされる。

14. 囚牛(しゅうぎゅう)

龍生九子の一つで、音楽を好み、楽器や鐘に配される。芸術と調和の霊獣として表される。

15. 蟠螭(ばんち)

石碑や建築に使われる螭龍(ちりゅう)の一種で、龍の幼形。神聖な空間を浄化し守る意匠として使われる。

16. 鵬(ほう)

巨大な鳥で、一度飛ぶと数千里を移動するとされる。荘子の『逍遥遊』に登場し、理想的自由の象徴とされる。

17. 鳳凰(ほうおう)

五徳(仁・義・礼・智・信)を備えた聖獣で、天下泰平の象徴。皇后の象徴としても使用され、鳳冠の意匠にもなる。

18. 青龍(せいりゅう)

東方を守護する四神の一つ。春と木徳を司り、陰陽五行の体系における重要な方角の守護霊獣。

19. 白虎(びゃっこ)

西方を守護する四神。秋と金徳を司り、武力と勇猛の象徴として古代軍旗にも用いられた。

20. 朱雀(すざく)

南方の守護霊で、火と夏を司る。不死鳥に近い属性を持ち、再生と浄化の意味を含む。

21. 玄武(げんぶ)

北方の守護霊で、蛇と亀が融合した姿を持つ。冬と水徳を司り、寿命や知恵の象徴とされる。

22. 霊亀(れいき)

長寿と吉兆をもたらす神聖な亀。四霊の一つとして、天地安泰や国家繁栄を祈願する象徴に使われた。

23. 白龍(はくりゅう)

天帝に仕える清浄な龍とされ、善神に属する存在。水を司る瑞兆として雨乞いや王権の正当性と結びつく。

24. 赤龍(せきりゅう)

火を象徴する龍で、天地の変化や戦の予兆として登場する。五行思想における火徳に関連付けられる。

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